心臓のこと・
不整脈のこと

治療方法を知る前にまずは心臓の働きや不整脈について、どのような働きをしてどういう役割をはたしているか、あらためて確認してみませんか?
基礎知識を把握し、治療方法をしっかりと理解していくことも大切です。

1. 心臓の働き

心臓は右心房、右心室、左心房、左心室と言われる4つの部屋から成り立っており、全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしています。
また、ポンプの機能は電気信号によってコントロールされています。
電気信号は洞結節と言われる箇所から発信され、まずは右心房及び左心房に伝わり、その後房室結節と言われる箇所を介して右心室及び左心室へと伝わります。
電気信号が心房あるいは心室へ伝わると心房あるいは心室は収縮し、電気信号がなくなると拡張します。
 この心臓の各部屋の収縮と拡張という一連の動きを拍動といい、心臓は拍動を繰り返すことで、血液を全身に送り出しています。

心臓の働き

2. 心房細動について

心臓は拍動を繰り返すことで血液を全身に送り出していますが、その回数は1分間に60~100回程度が正常範囲と言われています。
1分間あたりの拍動が正常範囲から外れたり、拍動のリズムが乱れたりする状態を不整脈と言います。
不整脈には、主に拍動のリズムが①正常範囲より速いもの、②正常範囲よりも遅いもの、③不規則になるものがありますが、心房細動は速いものに分類され、その直接原因は心房が異常に速い速度(1分間に350回以上)で収縮することにより生ずる不整脈です。
また、心房細動は主に下記の4種類に分類されます。

01発作性心房細動

発症後7日以内に
正常な状態に戻る

02持続性心房細動

発症後7日以上
心房細動が持続する

03長期持続性心房細動

発症後1年以上の長期に渡り心房細動が持続する

04永続性心房細動

治療により正常な状態に戻すことができない

3. 心房細動の臨床症状

心房細動は必ずしも症状が現れるわけではありませんが、動悸や疲れを感じやすくなることや、胸部に不快感を覚えることもあります。心房細動になると心房が異常に速く細かく震えた状態になるので、血液を正常に送り出しにくくなり、血液が心房内によどみやすくなります。よどんだ血液は血栓(血液の塊)を生じさせる場合があり、血栓が心臓から送り出された先で血管を塞ぐと血栓塞栓症となります。これが脳で発生すると、脳梗塞となります。また、心房細動の状態を放置すると心臓に負担がかかるため、心臓のポンプ機能が低下し、場合によっては心不全を引き起こす可能性もあります。

01血栓塞栓症

左心房で血液がうっ血して血栓ができ、左心房でできる大きな血栓は太い血管を閉塞し、後遺症の残る脳梗塞のリスクがあります。その結果半身不随等の、生活に影響を与える症状が発生する可能性もあります。
抗凝固療法により、予防が可能な場合があります。

02心不全

心房が不規則に興奮すると、心室が興奮するタイミングと合わなくなることで効率よく心臓から血液を送り出すことができず、心不全に陥ることがあります。
抗不整脈薬および心不全治療薬により、治療が可能な場合があります。

4. 心房細動の原因

心房細動の原因としてまず挙げられるのが加齢です。その他にも飲酒や不眠などの生活習慣も原因として挙げられます。こうした原因により、洞結節以外の箇所から1分間に350回を超える高頻度の電気刺激が発生するようになると、心房が異常な電気刺激を受け続け、心房が細かく震えた状態になります。こうした異常な電気刺激の発生源として最も多いのが肺静脈(肺から左心房へ血液を送り届ける4本の血管)の付け根にある箇所です。
 また、発せられた異常な電気信号が心房のあちこちで旋回する(この現象をリエントリーと呼びます)ことで、心房が細かく震えた状態(すなわち心房細動)が継続するようになります。

正常時

正常時

心房細動

心房細動

5. 心房細動の治療

心房細動治療の選択肢である薬物療法には、主に血栓の生成を予防する治療(抗凝固療法)と、心臓の動きを正常に戻す治療(抗不整脈薬療法)があります。

01抗凝固療法

心房細動と診断され、血栓のリスクがある場合、まずは抗凝固療法の適用の有無を評価することが勧められています。
抗凝固療法により血液が凝固しにくくなるため、心房内に血栓が生じにくくなりますが、一方で副作用として出血が固まりにくくなるというリスクもあります。
このようなリスクを考慮し、使用しても問題がないと判断された際に抗凝固療法が開始されます。

02抗不整脈薬療法

抗不整脈薬にはいくつかの種類があり、患者様の状態によっては使用できない薬もあるため、患者様に適した薬を服用することが大切になります。
適した薬を服用することで、症状を抑えることができますが、徐々に薬剤耐性が生じたり、心不全の悪化等の副作用を誘発してしまうリスクもあるため、抗不整脈薬のみで心臓の動きを長期間にわたり正常に保つ治療には限界があります。

このような薬物療法以外にも、心房細動の治療方法として、
外科的治療やカテーテル治療(カテーテルアブレーション)といった、非薬物療法もあります。

カテーテル治療について