カテーテル
治療について

1. カテーテルアブレーションとは

足の付け根の血管から心臓内にカテーテルを挿入し、カテーテルにより心臓の組織を焼く(このことを「焼灼」(「アブレーション」)と言います。)ことで、心臓の動きを正常に戻すという治療法です。
 カテーテルは細い管なので、体内への挿入部位の傷も「外科的治療」と比較すると大変小さく、患者様への負担も少ない治療です。

カテーテルアブレーションとは

2. カテーテルアブレーションによる心房細動治療

心房細動治療を目的としたカテーテルアブレーションでは、心房細動の原因となりうる異常な電気信号の発生源である肺静脈と左心房の間の電気信号の伝達を、カテーテルによる焼灼で隔離することを主な目的とします。
アブレーションの成功率は、発作性心房細動では初回のアブレーションで50~80%、2回目のアブレーションを実施することでより高い頻度で心房細動を根治できると言われています。
また、持続性心房細動は発作性心房細動と比較して根治が困難であると言われますが、複数回のアブレーションを実施することで、ある程度の確率で根治できると言われています。
アブレーションの方法としては、カテーテル先端に取り付けられた電極から発せられる高周波で、組織を1点ずつ焼灼するものが一般的でした。

  • 根治:その病気の元を根本的に治療すること。

3. バルーンカテーテルによるアブレーション

近年は先端にバルーンが取り付けられたタイプのカテーテルも登場しており、温めたバルーンを組織に押し当てることで焼灼する方法(ホットバルーン法)や、冷やしたバルーンを用いる方法などがあります。バルーンタイプのカテーテルを用いることで、1度に広範囲を焼灼することができます。また、膨らませたバルーン内部からレーザーで焼灼する方法なども登場しており、様々な特徴を持つカテーテルを、患者様の状態に合わせて使い分けることができるようになってきています。

4. カテーテルアブレーションの合併症

カテーテルアブレーションにおいても、他の治療法と同様に合併症のリスクがあります。
代表的な合併症として次のものが挙げられます。

脳梗塞

横隔神経麻痺

食道潰瘍

心タンポナーデ

肺静脈狭窄

脳梗塞

カテーテルが血管や心臓の中で血液と触れると血液が固まり血栓ができやすくなります。また、カテーテルから空気が血管内に入り込んでしまうことが稀にあり、この血栓や空気が心臓から送り出されて血管を塞いでしまうと「脳梗塞」などを引き起こすことがあります。アブレーション中は血栓を予防するため、抗凝固薬を使いながら治療を行います。

横隔神経麻痺

多くの場合自覚症状はありませんが、横隔神経(横隔膜を動かす神経)にアブレーションが影響することがあり、呼吸困難感などを感じることがあります。大部分は一時的なもので、時間の経過とともに回復します。

食道潰瘍

心臓のすぐ後ろに食道が接しているため、アブレーションが食道にも影響し、食道に潰瘍等を形成することがあります。アブレーション中は食道を冷却しながら治療を行うこともあります。

心タンポナーデ

カテーテルの先端等で心臓の壁を傷つけてしまい、心臓からの出血が起こった場合、二層になっている心臓の膜の間に血液等が溜まることで心臓が圧迫され、十分に拡張できない心タンポナーデという状態になります。その場合は外科的手術などの処置を行います。

肺静脈狭窄

肺静脈のアブレーションにより、肺静脈が狭くなってしまうことが稀にあります。血液が正しく流れにくくなることで心不全に繋がる可能性もありうるため、狭くなった肺静脈を広げるためのステントの留置が必要になることがあります。

早期の適切な処置により、症状が改善する合併症もありますのでアブレーション後に身体の不調を認めた場合には、アブレーションを実施した病院の担当医師に相談することが大切になります。

5. 治療の流れ

カテーテルアブレーション治療の流れはおおよそ次の通りです。

01

血管造影室に入室後、カテーテルを挿入する箇所の消毒を行います。

02

局所麻酔(場合によっては全身麻酔)を施した後に、消毒部位より治療に必要なカテーテル類を体内へ挿入します。

03

治療を開始する前に、検査用カテーテルを用いて心臓内の心電図等を確認し、治療に必用な情報を収集します。

04

アブレーション用カテーテルを心房へ留置し、特に肺静脈周囲のアブレーションを実施します。

05

治療が完了した後は、全てのカテーテルを体内から抜き、カテーテル挿入部位の止血を行います。

06

治療後6~8時間は絶対安静になりますが、その後問題がなければ歩行することが可能となります。

6. 入院について

01入院期間について

心房細動のカテーテルアブレーション治療の入院期間は、一般的に2泊3日から4泊5日程度になります。カテーテル治療は身体への挿入部位の傷も小さいため、特に問題が無ければ、治療の翌日から歩行可能です。

02費用について

心房細動のカテーテルアブレーション治療のおよその費用は250万円程度となりますが、保険適用や高額医療に対する還付制度により、最終的な個人負担額は10万円前後となります。
入院費について気になる患者様は各病院のソーシャルワーカーにご相談いただくこともできます。

7. 治療終了後

治療により「心房細動」が根治されたことを確認できれば、一定期間は血栓の生成を防ぐ抗凝固剤の服用が必須ですが、その後終了できる可能性もあります。
ただし、脳梗塞等のリスクが高い患者様は抗凝固療法を継続することもあります。
抗不整脈薬に関しては、治療後に心房細動が出現せず、安定している場合には、医師の判断により服用を中止することができます。
なお、心房細動は一生を通じて再発することもありますので、気になる症状が認められた場合には早めに医師に相談することも大切です。